スイスプライベートバンキングの闇とヨルダン疑惑
公開日:2022年02月22日
私は天邪鬼(あまのじゃく)なもので、地上波の情報番組でウクライナ問題が取り沙汰されると、もはやフォローしたくなくなるのです(‘◇’)ゞ
それでも、「有事のドル買い」とはもはや言えず、「リスクオフ」で株安ドル安だというシグナルに有象無象が動意している点は注目ですね(゜_゜>)
ウクライナ問題の背景についてはほぼ一か月前に詳述しました。簡単に言えば、NATO(北大西洋条約機構)の「国境」が旧ソ連およびWTO(ワルシャワ条約機構)に浸食してきたことに対するプーチンの怒りということになります(#^ω^)
さて、そのNATOですが、NATOに入っていそうで入っていない国というのは、東大王の立派な問題にもなりそうですよ。
難易度が一番低いのはスイスでしょう。
しかし、アイルランド、スウェーデン、オーストリア、フィンランドを言い当てるひとはかなりのクイズおたくではないでしょうか。
ところで、(スロバキア、スロベニア、ブルガリアと同じく)2004年にNATO入りしたバルト三国と1999年にNATO入りしたポーランドの間にも、ウィキペディアの地図を見る限りNATO入りしていない「国」がありそうです。これがどこなのかよく見てみたら、実は、ロシアの飛び地でした。
以上、オンライン飲み会の小ネタとして貢献出来たらうれしいですm(__)m
今日の本題は、非同盟中立国の王道をゆくスイスです!
そんなスイスの国力を支えているのが、精密機械や観光というよりはむしろ、KYCに難ありとOECDから駄目だしを食らい続けているプライベートバンキングであることは周知の事実です。
何とも物価の高いこの国に割拠する大小さまざまなプライベートバンクのなかでも代表格はUBSとクレディスイスです。そのクレディスイスから、パナマ文書を彷彿とさせる内部告発が飛び出しました。
2013年からのアラブの春の舞台となった超長期政権の北アフリカ~中東の王族の多くがクレディスイスの隠し口座に巨額の資金をため込んでいたという話です。
言わばこの「スイス文書」に名を連ねる国家元首のなかで、唯一現役の元首がヨルダン国王なのです。我がイスラエル(←実はここも我がアイルランド同様「非同盟」なのです!)とヨルダン川(西岸地域)で緊張感を保ちながら接しているマホメットの末裔を名乗る歴代国王の治める国であります。
1990年の湾岸戦争の当時、「イラクのサダム・フセイン大統領は悪い奴だが、同じ名前でもヨルダンのフセイン国王は良い人だから間違ってはいけない」と良く言われていたものでした。渦中の現国王は、1999年に亡くなったフセイン国王の息子です。
クレディスイス職員による内部告発はまず南ドイツ新聞で報じられ、それをイギリスのリベラル系新聞であるガーディアンと、ニューヨークタイムズが詳しく報じています。ニューヨークタイムズによると、
1 ヨルダンの現国王が、米国からの軍事支援と経済支援は220億ドルにのぼる(2018年現在)
2 国王夫妻はスイス口座を6つ持っており都合264百万ドルの残高があったが2015-16年にかけて口座閉鎖している(口座凍結ではなさそう・・・筆者注)
ヨルダンにフォーカスするとハッキリした情報はこれだけのようです。エジプト、オマーン、アルジェリア、、、イエメン、、、ヨルダンと米国の諜報機関同士の関係などほかの怪しい情報については、
Arab Rulers and Spy Chiefs Stashed Millions in Swiss Bank
かいつまんだ内容の日本語サイトもあります。
衝撃の内部告発 金融最大手「クレディ・スイス」に 11兆円以上の“隠れ資産”を持っていたのは誰か
トランプ前大統領の「ロシアゲート」やバイデン現大統領の(息子の)「ウクライナゲート」のように結局は迷宮入りしてしまうかも知れない今回注目のヨルダンゲートも、ウクライナ問題を分析するうえでは欠かせない冷戦構造と米情報機関(この場合はCIA)が深く関わることは間違いないでしょう。イスラエルだけを米国は猫かわいがりしているわけではない複雑な国際情勢も見えてきます。
残念ながらまだ情報が限られているので断定的なことは言えません。が、どうも私には、今回の内部告発が、正義感にあふれるクレディスイスの職員が反マネーロンダリングの観点からの義憤でぶちかましたという単純なものとは思えないのです。
投稿者:丹羽 広
最終更新日:2022年02月22日