おすすめYouTuber・・・(後編)「数学」「鉄道」

公開日:2022年05月07日

お待たせしました。いや、それほど大勢の読者に待たれていない感が満載ですが、続いて「数学」です。

環境やエネルギーの問題、戦争、感染症など、人類の将来は明るくもなさそうだという雰囲気に満ち溢れている今日この頃、インターネット社会の良い一面はこれだなと思えることがありました。

【数学系YouTuber】

見たことがあるチャンネルは以下の通りです。良し悪しを判断できる立場ではないですしその能力もありません。このほかにもすぐれたYouTuberがいると思います。

AKITOの特異点

チャンネル登録者数 6.66万人

動画の更新はここ1年なされていないように見受けますが、ツイッターは続いているようです。数学マニアであることは当然として、トークも巧妙で、才能にあふれています。

予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」

チャンネル登録者数 89.9万人

教育系YouTuberの草分けだと勝手に筆者が思っているヨビノリタクミさんです。数学系で視聴回数を稼ぐには大学入試問題にフォーカスしたほうが楽なのですが、あえて、大学入学後に数学で落ちこぼれそうになる学生をターゲットにしているところがユニークです。

変わり種の動画で、

教育系YouTuberにならない方がいい7つの理由

というのがあります。YouTubeビジネスの裏側を赤裸々に語った非常に貴重な内容です。

(前編)で宇宙論に関する動画を紹介しましたが、ヨビノリさんの、

宇宙創生から現在まで【宇宙の歴史①(過去編)】

は非常にわかりやすく、現在のところ何がわかっていないかがわかります。

さて、注目は、大学院(修士)を卒業したばかりの古賀 真輝 Masaki Kogaさんです。

西日本を代表する中高一貫の進学校の正教員として就職が決まったにもかかわらず、YouTubeの活動を続けられると発表しました。

進学校も、予備校も、優秀な教員を抱え込むことで、優秀な生徒を確保し進学成績(「どこどこ大学に何人合格させました」など)という親御さんたちに訴求すべきKPIを競っているものだと考えられてきました。

「優秀とは何か」というのはまた別問題ですが。

この点、正規採用後もYouTubeを続けたいと願った古賀さんの心意気もさることながら、それを許可した某学校法人の寛大さには快哉を叫びたくなります。

酒は白鹿です。

まだまだ超優秀な方々はいらっしゃいますがきりがないので最後におひとかただけ。

楽しい数学の世界へ

チャンネル登録者数 2.27万人

ななゆうさんもまた東京大学数学科卒の俊英です。以下は異例なコンテンツですが、

これから数学科教員を目指す人へのアドバイス

必見です。

【鉄道】

まずは、

スーツ 交通 / Suit Train 

チャンネル登録者数 90.4万人

つい先日横浜国立大学を卒業されたとの動画がありましたが、概要によればYouTubeをはじめたのが2010年ということですから、天才というよりは神童です。池袋の某書店に行ったら、JTBやJRの時刻表の横にスーツ君の著書が平積みになっていました。

おびただしい数の動画のなかで、ひとつだけお勧めというのは難しいのですが、あえてこれを、

【遅すぎる特急】JR東海の「伊那路」に乗車 これは遅くても仕方ない……

まだグーグルマップでの経路検索やYahoo!の時刻表などが使えなかった時代、時刻表は、学生にとっても社会人にとっても必需品でした。その最初のほうのページには、旧国鉄を中心とする路線図が載っています。このなかで、大都市圏近郊電車を除くと、やたらと駅が稠密している路線がひとつあり、何故なんだろうと好奇心を駆り立ててくれていたのが現在はJR東海に属する飯田線です。

これにはちゃんと歴史的な理由がありました。中央本線の誘致に失敗した(政治的に木曽谷に負けた)伊那谷の政財界が遅ればせで鉄道を通したが、中央本線や東海道本線(これらは官営鉄道)が敷かれた時期は蒸気機関車が前提であったのに対して、飯田線の前進のひとつである伊那電気鉄道は、国内では京都市電に続く「最初から電車を通せた路線」となった。よって、電化後駅の数が増えた山手線や山陰本線京都~嵯峨嵐山間のように、最初から駅の数が妙に多かった(汽車より電車のほうが加速と減速が容易である)というわけです。

諏訪から伊那にかけては水力発電がやりやすかったからというのも理由のひとつかも知れませんが、この水資源は諏訪近郊の生糸生産にも消費されていたので、非常に端折ると、繊維産業と鉄道事業との間での電力の奪い合いや利益相反のような問題があったとされています。

あと、飯田線に限らず、日本の鉄道の多くは山岳鉄道であったりするわけで、トンネル技術の進歩とそれによるサンクコストというのが、コロナ禍で改めて問題になっているローカル線赤字問題を悪化させています。これだけだとなんのことだかさっぱりですので、稿を改めたいと思っています。飯田線に関しては、スーツ交通では、手彫り(手掘り)のトンネルが紹介されていて、それがどういうひとたちの汗と命のおかげでなされたのかへの言及もあります。

もうおひとり、鉄道を歴史という視座からマニアックにしてかつ独特のネタ文学で彩る鉄道系YouTuberで最近のおきにいりをご紹介しますと、

にっこーけん【旅行】ー日本の交通を研究する会

チャンネル登録者数 8.67万人

【1分弱車載祭】近鉄だけで京都から名古屋を目指すついでに近鉄の歴史も解説【VOICEROID車載】

赤字ローカル線を多く抱えるJR各社のうち、新幹線が超過利潤をもたらしてきた会社では、高速道路のプール制のような具合で、赤字路線の維持に努めてきました。これがコロナ禍の二年間でワークしづらくなり、先日のJR西日本による赤字区間公表という広報につながるわけです。

ローカル線の廃線(危機)と一口に言っても、理由はひとつだけではありません。北海道と九州においては炭鉱閉鎖が最大要因だったと言えます。東北、北陸、中国地方は、人口減少とモータリゼーションだ、と片づけたいところですが、モータリゼーション=「田舎ではクルマに乗る人がほとんどになった現象」だと定義すると、ちょっと見落としがあります。鉄道インフラが整備された時代と、自動車専用道路や酷道(こくどう、または、ひどみち、と発音します)が改善された国道の整備が進んだ時代とでは、トンネル掘削技術が大いに異なるため、特急列車を頑張って走らせても、高速道路に勝てないという現象がどんどん進んでしまっているというわけです。

さて、JR西日本が発表した存続見直しを検討したい赤字区間のなかで、上記の理由とは異なるユニークなものがひとつあります。それは、関西本線の非電化単線区間の亀山~加茂です。

国鉄または官営関西本線の前身である民営の関西鉄道(くゎんせいてつどう)にも、上述の飯田線同様、複雑な歴史があります。これを紐解くことで、公共性(外部性)が高そうな産業であっても、国家権力による資本主義経済への介入は結局は余計なお世話となってしまうことが多いという事実に目を向けることができると考えています。

にっこーけんさんの近鉄(この場合、近畿日本鉄道のことであって近江鉄道のことではありません!)にまつわるこの動画は、こうした歴史への糸口として非常によくできた内容になっていると思います。関西地方にお住まいでない読者の皆さんも是非ご視聴ください(「1分」と書いてありますが、これはニコニコ動画でいう1時間なのだそうです。知りませんでした)。

投稿者:丹羽 広

最終更新日:2022年05月07日